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研究組織

A02班 少数性の生物学

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A02班 少数性の生物学

本計画班においては、タンパク質複合体、細胞の刺激受容と情報伝達、細胞核内情報検索と遺伝子発現、遺伝子産物の数制御の4点について計画班が研究を行います(石島、杤尾、前島、上田、鵜飼、中嶋)。
計画班の研究内容だけでは十分に生命現象を網羅できないため、公募班から少数性生物学に相応しい課題を扱うものを採択することで不足部分を補うこととします。
細胞の刺激受容と情報伝達については、ポアソン性と空間階層性に着目して解析を行います。光照射によってスイッチング可能な走化性因子を開発し、これを用いて、細胞に走化性行動を誘起させます。その時の光照射から細胞運動(例えばべん毛運動など)の変化までの一連の分子プロセスを1分子レベルで分子の結合/解離、回転拡散、並進拡散を計測し、それぞれの時定数と刺激受容から細胞応答までの時間を解析します(石島、杤尾)。
細胞核内情報検索と遺伝子発現については、ゲノム情報をもつ染色体の構造ゆらぎと遺伝子発現に関与するタンパク質の少数性に起因する数ゆらぎとの関係に着目します。まず、染色体の構造ゆらぎを測定します。そして、化学反応場の構造ゆらぎが、少数の分子からなる化学反応に及ぼす影響を、計算機シミュレーションや、分子数を人為的に操作した時の遺伝子発現の変化を解析することで検討します(前島)。
遺伝子産物の数制御については、そのターンオーバー制御、つまり合成速度と分解速度の制御に着目します。同じタンパク質複合体を構成するタンパク質でもターンオーバーの速いものもあれば、遅いものもあり、数が多いものもあれば、少ないものもあります。これが生理的にどのような意味があるのかほとんど明らかになっておらず、少数分子の数の制御の観点も併せ持つことから、遺伝子産物の生理的アウトプットとして現れる生体リズムとの関連で解析を行います(上田、鵜飼、中嶋)。

A02-1班  細胞内情報伝達の少数性生物学-生命システムにおけるポアソン性の解析-

氏名:
石島 秋彦  HP
機関:
大阪大学・生命機能研究科
専門分野:
生物物理学
役割分担:
実験デザイン、試料調整

研究の目的

細胞内における生体分子の相互作用・生化学反応は、試験管レベルにおけるモル数レベルの大自由度を有する反応とは違い、少数分子が高密度に存在する反応でです。その動作原理を理解するためには、細胞内の少数分子の挙動を直接観察し、これに立脚した理論の構築が必要です。従来にもいくつかの計測手法が計画され、実行されてきましたが、いずれも単一のパラメータのみの計測であり、細胞内生体分子反応の全体像をつかむまでには至っていません。本計画では、細胞への外部刺激によるサブミリ秒での制御(caged化合物)、細胞表面受容体の構造変化の直接計測(ダイアモンドナノ粒子)、細胞内情報伝達機構の直接計測(マルチモーターの同時計測、ラマン分光法)を用いた多角的な同時計測システムを構築し、細胞外部からの誘因・忌避物質刺激に対する受容体応答の高ダイナミックレンジ検出機構及び細胞内情報伝達系を統合的に理解することを目的とします。

  氏名 機関 専門分野 役割分担
研究分担者
杤尾 豪人
京都大学・理学研究科 構造生物学、
磁気共鳴分光
細胞内蛋白質の構造解析

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A02-2班  遺伝子発現の少数性生物学-少数分子による情報探索原理の解明-

氏名:
前島 一博  HP
機関:
国立遺伝学研究所・構造遺伝学研究センター
専門分野:
生物物理学
役割分担:
染色体構造ゆらぎイメージング

研究の目的

全長2 mのゲノムDNAには同じ遺伝子が基本的に「2個」しか存在しません。また、遺伝子の発現を司る転写因子群も一般的に少数であるとされています。本計画研究では遺伝子発現制御のうち、「細胞核という微小空間の中でゲノム情報がいかに検索されるのか?」に焦点をあわせ、少数分子による情報検索原理を「ゲノムの足場の動き」と、ターゲットを探す「転写因子の動き」の両面から明らかにすることを目的としています。従来、ゲノムはヌクレオソーム構造が規則正しく、階層構造を作り、細胞核内で折り畳まれていると考えられていましたが、代表者らはこのヌクレオソーム構造が不規則な形で折り畳まれていることを見出しました。このことはゲノムの足場が動く可能性を示唆しています(構造ゆらぎ)。本計画研究では、生細胞内の個々のヌクレオソーム(ゲノムの足場)と転写因子の動きを1 分子レベルで直接イメージングする技術を開発し検証します。さらに、計算機シミュレーションを組み合わせて、核内の動的な環境をモデル化し、既存データを加えて、今までほとんど研究が成されてこなかったゲノムの情報検索の原理を解明します。

  氏名 機関 専門分野 役割分担
研究分担者
谷口 雄一
HP
独立行政法人理化学研究所・
生命システム研究センター
生物物理学 核内1分子イメージング
連携研究者
高橋 恒一
HP
独立行政法人理化学研究所・
生命システム研究センター
計算機科学 シミュレーション技術の提供
吉村 成弘
HP
京都大学・生命科学研究科 分子生物学 核内物質輸送制御の技術提供

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A02-3班  生体リズムの少数性生物学-生命システムにおけるターンオーバー制御と分子少数性-

氏名:
上田 泰己  
機関:
東京大学・大学院医学系研究科
専門分野:
システム生物学
役割分担:
実験デザイン

研究の目的

生命における計時機構である概日時計により生み出されるリズム(概日リズム)の周期は、構成分子の少数性に比して正確です。また外部環境の温度変化に対して頑健である一方で、外部環境の照度変化や急激な温度変化に対しては柔軟に適応します。概日時計の構成分子(遺伝子、タンパク質)についての多くの分子生物学および細胞生物学的知見の蓄積にもかかわらず、概日時計の正確性・頑健性・適応性をもたらす分子・ネットワーク機構については完全には理解されていません。本提案ではこれまでのシステム科学的研究を踏まえて、未解明である哺乳類概日時計の正確性・頑健性・適応性をもたらす分子機構・ネットワーク機構について、ネットワーク構成要素の少数性に着目し、1)ターンオーバー制御による周期の正確性、2)時計タンパク質間相互作用および酵素反応特性による周期の頑健性・適応性の2つの問題に対するアプローチを通じて解明することを目指します。

  氏名 機関 専門分野 役割分担
研究分担者
大出 晃士
東京大学・大学院医学系研究科 生化学・分子生物学 in celluro / in vitro 実験
研究協力者(研究分担者 2011~2012年度)
鵜飼 英樹
HP
独立行政法人理化学研究所・
生命システム研究センター
分子細胞生物学 in cellulo 実験
研究分担者(2011~12年度)
中嶋 正人 近畿大学医学部・解剖学教室 生化学 in vitro 実験

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